太陽光の悪夢:中国製急増で国内産業崩壊のフランス -「時限爆弾」抱える日本

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太陽光の悪夢:中国製急増で国内産業崩壊のフランス -「時限爆弾」抱える日本

再生可能エネルギーの象徴として拡大を続ける太陽光発電。

しかし今、フランスでは太陽光政策の“裏側”が深刻な問題となっています。それは、税金で支えた政策の結果、国内産業が消えつつあるという構造的なパラドックスです。

この現象は、再エネ政策の盲点を浮き彫りにしています。そしてこれは日本にとっても他人事ではありません。むしろ日本には、さらに複雑な「別の時限爆弾」が待ち構えています。

設置パネルの88%は中国製 ― 購入資金は国民の税金

フランスではこの10年、政府の強力な支援策によって、大規模太陽光発電所から住宅用設備まで導入量が着実に増加してきました。

しかし、フランスのエネルギー規制委員会(CRE)が公表した最新データは、その理想が厳しい現実に直面していることを示しています。太陽光産業におけるフランス企業の市場シェアは急落。アジア勢との激しい価格競争と、一貫性を欠く政策の板挟みになり、歴史ある企業の倒産が相次いでいます。

中国勢に圧倒されたフランスの太陽光市場

CREの報告書は、風力発電との対比において衝撃的な事実を突きつけています。風力分野では欧州メーカーが96%以上のシェアを維持しているのに対し、太陽光は完全に主権を失っています。

【地上設置型発電所(大規模)】

  • 外国製パネルの割合:約88%(その大半が中国製)
  • フランス企業のシェア:2年前の約5%から、現在は約2%へ急落
地上設置型発電所(大規模)メーカーのシェア
参照ːCRE

【屋根設置型(住宅・店舗用)】

  • フランス製:約10%
  • 外国製:約89%
屋根設置型(住宅・店舗用)メーカーのシェア
参照ːCRE

主要な国内メーカーも消滅

公共入札で採用されるパネルのほとんどが中国製となった結果、フランスの老舗メーカー「Photowatt(フォトワット)」社も閉鎖に追い込まれました。

同社はかつて国家支援を受け、欧州の太陽光産業を牽引する存在でした。しかし、圧倒的な資本力を背景とした中国製パネルの低価格攻勢に抗えず、生産規模は激減。フランス国内の太陽光製造基盤は、今やほぼ消滅。わずかにいくつかメーカーが残るだけです。

再エネ業界で進む「雇用の喪失」

苦境にあるのはパネルメーカーだけではありません。風力タービンメーカーのVergnet(ヴェルニエ)社は司法清算手続きに入り、農業用太陽光発電を展開するOkwind(オクウィンド)社も大規模な事業再編を余儀なくされていると報じられています。

中国製パネルの過度な低価格化は、市場全体の収益性を押し下げ、結果としてフランス企業が健全に競争できる環境を破壊してしまいました。業界団体によれば、フランスの再エネ関連産業は2024年末以降、すでに雇用の約6%を失っているとのことです。


「国民の負担」が海外産業を育てる皮肉な構造

現在、実質的にフランスの税金が海外産業を支えるという歪んだ構図が定着しています。その仕組みは以下の通りです。

  1. 電気料金や税金から「再エネ支援費」を徴収
  2. 国が固定価格での買い取りを保証(FIT制度等)
  3. 事業者が設備を導入する際、コストを抑えるため「最も安い設備」を選択
  4. 安価な中国製パネルが選ばれる

つまり、 【国民の負担 → 補助金・賦課金 → 海外製パネルの購入】 という資金の流れができあがっています。

発電設備そのものは国内に設置されますが、製造工程で生まれる付加価値や雇用、技術投資の原資はすべて国外へ流出します。フランスの納税者が拠出した資金が、結果として競合国である中国の産業発展に貢献しているのが「太陽光の悪夢」の本質なのです。


なぜ政策は「産業の空洞化」を止められないのか

理由は明白です。これまでの再エネ政策の評価指標が以下の3点に偏重していたからです。

  • 総導入量(メガワット数)
  • 総発電量
  • 目先のCO₂削減量

「どの国の製品か」「国内産業に利益が還流するか」という視点が欠落していた結果、「発電目標は達成したが、国内産業は崩壊した」という、戦略的な敗北を喫することになりました。


日本に待ち構える「廃棄問題」という時限爆弾

この問題は日本にとっても深刻な警告です。日本も「再エネ賦課金」として電気料金に上乗せする形で、国民が多大な負担を強行していますが、その資金の多くが海外製設備の購入に充てられている構造はフランスと同じです。

しかし、日本にはフランス以上のリスクが控えています。それが、2030年代にピークを迎える「パネルの大量廃棄問題」です。

  • 廃棄量の爆発的増加:2010年代の大量導入分が一斉に寿命を迎える。
  • 処理コストの増大:リサイクル体制の整備が追いついていない。
  • 環境汚染リスク:不適切な投棄や、山間部に放置された設備の崩落懸念。

フランスが「産業の消失」という経済的課題に直面しているならば、日本はそれに加えて「物理的なゴミの山」という環境的・社会的課題にも直面しようとしています。

結論:導入量だけでは政策の成否は測れない

フランスの事例が教えてくれるのは、「再エネの普及」と「国内産業の育成」は、戦略的に設計しなければ両立しないという教訓です。

日本の太陽光パネルメーカーも、今や完全消滅の瀬戸際にあります。フランスで起きている「悪夢」は、明日の日本の姿かもしれません。私たちは今一度、導入量という数字の裏側にある「資金の流出」と「将来のコスト」に目を向ける必要があります。

 

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