「容量拠出金相当額」のお知らせが届いたら読む話。なんで電気代が上がるの?
「2026年度 容量拠出金相当額のお知らせ」――。もしあなたが新電力を利用しているなら、最近こんなタイトルのメールやハガキを受け取ったかもしれません。「容量拠出金? また新しい税金か何か?」と不安になった方もいるでしょう。実はこれ、私たちの電気代に静かに、しかし確実に影響を与え始めている「隠れたコスト」なのです。専門用語だらけで難解なこの制度、一体何のために払わされているのか、そして2026年度に何が起きるのか。かみ砕いて解説します。
「将来の停電」を防ぐための保険料? 容量拠出金の正体
新電力の中には、数年前から電気料金の明細のうち、「基本料金」や「電力量料金」などに加えて「容量拠出金相当額」の項目を設定している会社がいくつかあります。
でも、この「容量拠出金」とは一体何なのでしょうか?
これは、「将来停電しないために支払う保険料」のようなものです。私たちが普段払っている電気代は、あくまで「実際に使った電気」への対価です。しかし、電気というのは「使いたい時にいつでも使える」状態でないと意味がありません。
例えば、真夏の猛暑日や真冬の極寒の日、みんなが一斉にエアコンを使うと電力不足の危機に陥ります。そんな「いざという時」のために、普段はあまり動かしていなくても、いつでも発電できる準備をしている発電所(主に火力発電所など)を維持しなければなりません。その「待機している能力(容量)」に対してお金を払うのが、この制度の目的なのです。
・電力広域的運営推進機関(国の機関)が集める
・すべての電力小売り事業者が支払う(資金は契約者の電気代から徴収)
・発電所をもっている電力会社(発電事業者)が受け取る
そして、容量拠出金の徴収は2024年度から始まっています。
2026年度、値上げが確定している理由
「停電を防ぐためならしょうがないな」と思えるかもしれませんが、問題はその金額の上がり方です。2026年度は前年と比べて約1.6倍になることが確定しています。以下のデータを見てください。
| 年度 | 単価(円/kW) | 傾向 |
|---|---|---|
| 2024年度 | 775円 | 制度開始 |
| 2025年度 | 248円 | ⤵一時的に低下 |
| 2026年度 | 409円 | ⤴前年比 約1.6倍に急騰 |
| 2027年度 | 622円 | ⤴さらに上昇 |
なぜこれほど上がるのでしょうか?ひとつはオークションの結果そのものが高かったこと。そしてもうひとつの大きな要因が、「激変緩和措置(割引)」の縮小です。制度導入によるショックを和らげるために設けられていた割引が、年々減らされているのです。この「割引の縮小」と「元値の上昇」のダブルパンチが、2026年度の私たちを直撃します。
容量拠出金は、4年後に必要となる電気の供給力(kW)を見越してオークションで決定されます。日本では2020年に容量市場が開設され、同年に2024年度を対象としたオークションが開催。そして容量拠出金の徴収が2024年度から開始されました。
「容量拠出金相当額」を設定している主な新電力リスト
上記で見たとおり、すべての電力小売り事業者(一般家庭や企業などに電気を販売している電力会社)は、容量拠出金を支払っています。
ただし、すべての電力会社が契約者に対して容量拠出金を「容量拠出金相当額」といった明確な項目で請求しているわけではありません。大手電力会社をはじめ、多くの電力会社は容量拠出金に値するコストを基本料金の中に含んでいる場合が多く、気づきにくいのが現状です。
容量拠出金を別項目で請求している電力会社の例
以下の会社と契約している方は、マイページやメールなどで2026年度の容量拠出金に関するお知らせが届いていないか確認してみてください。
- Looopでんき(項目名:容量拠出金相当額)
- ハルエネでんき(項目名:安定供給維持費)
- シン・エナジー(項目名:容量拠出金相当額)
- Japan電力(項目名:容量拠出金反映額)
- ストエネ(項目名:容量拠出金反映額)
- パルシステムでんき(項目名:容量拠出金相当額)
容量拠出金を別項目で請求する理由は、電気料金の透明性を高めるためでもありますが、経営努力で容量拠出金のコストを吸収しきれないためでもあります。そのため、上記の電力会社と契約している場合、2026年度からの値上げの影響をダイレクトに受ける可能性が高いでしょう。
電気料金の項目に「容量拠出金相当額」がなくても安心はできません。「基本料金」や「電力量料金」を値上げすることで、このコストを回収する電力会社も出てくる可能性があります。しばらくは電力会社からのお知らせを注視しましょう。
容量拠出金の問題ー公正競争への疑念
容量拠出金はしばしばその公平性が問題視される制度です。
発電所を持つ大手電力会社*では、小売部門が容量拠出金を支払うものの、グループ内の発電部門がそのお金を受け取るため、会社全体で見ればお金がポケットからポケットへ移動するだけです。
*東京電力や関西電力など、電力自由化前は各エリアで独占的に電気の供給を行っていた電力会社。旧一般電気事業者とも呼ばれる
・支払い=小売部門:東京電力エナジーパートナー
↓
・受け取り=発電部門:東京電力フュエル&パワー
一方で、発電所を持たない新電力*は一方的に支払うのみ。これが経営を圧迫し、結果として私たち消費者への「値上げ通知」や、最悪の場合は「事業撤退」へと繋がっています。
*電力自由化後に電力市場に参入した大手電力会社以外の電力会社のこと
容量拠出金は今後の私たちの経済負担をさらに増やす可能性が高いのにも関わらず、消費者にはあまり知られていない制度です。
このような知らぬ間の負担増加を防ぐためにも、私たちは電気料金の明細にもっと関心を持ち、何のために料金を支払っているのか把握することが重要です。まずは自分の契約している電力会社がこのコストをどう扱っているのか、確認することから始めてみませんか。
![]() | この記事の執筆者:エネルギー・家計ジャーナリスト Rei N. |
