Googleも断念した「空飛ぶ発電機」、中国が実用化。コスト1/10・設置8時間の衝撃
風力発電は「地上」から「空」へ。かつて米Googleも挑戦し、撤退を余儀なくされた「空中風力発電」の難題を、中国が実用レベルで成功させました。
陸上・洋上風力発電の建設コストが原材料高騰により課題となるなか、中国が次世代エネルギーの切り札となり得る技術を実証しました。タービンを搭載した飛行船型の「空中風力発電システム」が、高度2,000メートルで安定発電を行い、電力を直接送電網へ供給する試験に成功させました。
実証試験の成功:30分でEV30台分の電力を供給
2026年1月5日、中国・四川省宜賓(イービン)にて、Linyi Yunchuan Energy Technologyが開発した「S2000 SAWES」の飛行試験が行われました。
わずか30分で目標高度に到達
試験では約30分で目標高度2,000メートルに到達。わずか30分間の飛行で385kWhを発電し、その電力を地域の送電網へ直接供給することに成功しました。これは、1時間あたり電気自動車約30台分をフル充電できる規模の発電能力に相当します。
The world's first megawatt-class high-altitude wind power system for urban use, the S2000 SAWES, has successfully completed a test flight in Yibin, Southwest China’s Sichuan Province on January 5. After a 30-minute ascent to 2,000 meters, it generated 385 kilowatt-hours of… pic.twitter.com/ywLnofaEkX
— Global Times (@globaltimesnews) January 5, 2026
システムの構造
このシステムは、ヘリウムを充填した全長60メートルの係留気球(エアロスタット)に軽量タービンを搭載した、全く新しい空中発電プラットフォームです。地上設備は係留ポイントと送電ケーブルのみで構成されます。
「脱コンクリート」がもたらす圧倒的な競争力
S2000が業界に与える最大の衝撃は、その「軽さ」と「速さ」にあります。
設置時間はわずか8時間以内
従来の風力発電は巨大なタワーと数百トンのコンクリート基礎を必要とし、建設に数か月を要していました。対してS2000は、システム全体が標準的な輸送コンテナ2基分に収まり、現場到着から発電開始までわずか8時間以内で完了します。
生産コストを1/10に削減
発電機全体の重量は1トン未満と極めて軽量で、同社は生産コストを従来型の約10分の1に抑えられると試算しています。これにより、化石燃料や既存の再生可能エネルギーに対して圧倒的な価格競争力を持つ可能性が出てきました。
70年の時を経て、NASAの理論を中国が実用化
空中風力発電の構想は、1950年代にNASAジェット推進研究所(JPL)の共同創設者の一人であり、中国の「宇宙開発の父」と称される科学者・銭学森(チエン・シュエセン)が提唱した理論にまで遡ります。
先行したGoogleの失敗をどう克服したか?
空中風力発電は「再エネの聖杯」と呼ばれ、かつて米Google(Alphabet)傘下のMakani Technologiesなどが実用化に挑戦しました。しかし、彼らが採用した「カイト(凧)型」は制御が極めて難しく、安定運用の壁を越えられず2020年に撤退しました。
一方、中国のS2000は安定性の高い「気球型」を採用。暴風時の自動降下制御技術や、25年の耐久性を想定した高強度素材を導入することで、Googleが直面した技術的課題をクリアしたとされています。
以下は、Google傘下のMakani Technologiesが手がけた「Makani Energy Kite」の開発風景。同プロジェクトは2020年、親会社Alphabetにより事業終了が決定された。
This Google owned company built a giant energy-producing kite. Makani’s M600 energy kite has been in development for almost 10 years.#gigadgets #windturbine #sustainableliving #windpower #technology pic.twitter.com/DEEJB1P6Rr
— GiGadgets (@gigadgets_) December 26, 2022
再エネの未来:地上風力を補完し「空」を拓く
開発チームは、この技術が地上風力を代替するのではなく、互いの弱点を補う「補完関係」になると強調しています。地表の風が弱い時間帯でも、高高度では別の安定した気流が吹いているためです。
普及に向けた今後の課題
今後は、送電網が未整備な離島や山岳地帯、災害時の非常用電源としての活用が期待されています。一方で、本格的な普及に向けては、航空機との接触回避や、高高度での落雷対策といった安全面・法規制の整備が今後の焦点となります。
開発チームは将来的に、エネルギー密度が地表の数百倍に達する高度1万メートルでの運用も視野に入れており、風力発電の主戦場は本格的に「空」へと移行しようとしています。
参考ニュース・資料
![]() | この記事の執筆者:エネルギー・家計ジャーナリスト Rei N. |
