日本 vs フランス:同じ183kWhで比べると?
比較の前提は以下の通りです。
本メディアは、フランスに親会社があるため、フランスの電気料金の請求書を取得し、とその使用量を東京電力の一般的なプランである「従量電灯B」に当てはめ、比べています。
昨今は、大幅な円安が続いているため、現行の為替レートの160円、そして過去の平均的な水準である120円の両方で試算しています。
どちらにしても、フランスの方が安いという結果は変わりませんでした。1ユーロ=160円という歴史的な円安水準でさえ、フランスの方が安いというのは驚きの事実です。「円安だから高く見えるだけ」という言い訳は通用しません。円高(120円)になれば差はさらに広がり、日本はフランスより36%も高くなります。為替がどう動いても、構造的な割高感は変わらないのです。
以下、詳細を見ていきましょう。- 使用量:183kWh(2026年4月実績)
- 日本:東京電力 従量電灯B・30A契約
- フランス:TotalEnergies オンライン料金・6kVA・HP/HCオプション(昼夜別料金)
- フランス側の料金は2026年5月現在の公式料金表に基づく
1ユーロ=120円の場合
| 日本(東京電力 30A) | フランス(TotalEnergies) | |
|---|---|---|
| 月の電気代 | 約9,015円 | 約5,798円 |
| 日本との差額 | — | 約▲3,217円(36%安い) |
1ユーロ=160円の場合
| 日本(東京電力 30A) | フランス(TotalEnergies) | |
|---|---|---|
| 月の電気代 | 約9,015円 | 約7,730円 |
| 日本との差額 | — | 約▲1,285円(14%安い) |
料金の内訳を確認
単純に「フランスの方が安い」と言っても、なぜそうなるのか、料金の内訳を見てみるとその理由がより明確になります。
具体的に、料金の「中身」を確認してみましょう。
日本(東電 従量電灯B・30A)の内訳(183kWh)
| 項目 | 計算式 | 金額(税込) |
|---|---|---|
| 基本料金(30A) | — | 935円25銭 |
| 従量料金・第1段階(〜120kWh) | 120kWh × 29円80銭 | 3,576円 |
| 従量料金・第2段階(121〜183kWh) | 63kWh × 36円40銭 | 2,293円 |
| 燃料費調整額(-8円93銭/kWh) | 183kWh × (-8円93銭) | ▲1,634円 |
| 再エネ賦課金(3円98銭/kWh) | 183kWh × 3円98銭 | 729円 |
| 合計 | — | 約5,899円 |
フランス(TotalEnergies・HP/HC・6kVA)の内訳(183kWh)
| 項目 | 金額(ユーロ) |
|---|---|
| 基本料金(Abonnement) | 15.65ユーロ |
| 昼間料金(HP:88kWh × 0.2159ユーロ) | 19.01ユーロ |
| 夜間料金(HC:95kWh × 0.1438ユーロ) | 13.65ユーロ |
| 電力税・送電網負担金(別途) | 請求書に含まれる形で徴収 |
| 合計 | 48.31ユーロ |
日本の請求書には「燃料費調整額」と「再エネ賦課金」という2つの変動要素が毎月ついてきます。これが「なぜ毎月電気代が変わるのか」の正体です。フランスの請求書にはこれに相当する項目がありません(後述)。
また、フランスには昼間(HP:Heures Pleines)と夜間(HC:Heures Creuses)で料金単価が異なるプランがあります。夜間(23時〜7時)は昼間より約3分の1安く、食洗機や洗濯乾燥機を夜間に動かすことで節約する習慣がフランスでは広く定着しています。
【注意点①】契約容量は同等ではない
今回参考にしたフランスの請求書では、契約容量が6kVAとなっています。フランスの6kVAは日本の約60A相当(フランスの電圧は200Vのため、6kVA÷0.2kV=30A相当ではなく60A相当)です。
一方、今回の日本側は30Aで計算しました。通常、月の使用量が183kWhの場合、30A程度の容量が一般的であるためです。
仮に日本も同じ60Aで比較すると基本料金が上がり、月の電気代は約9,928円になります。つまり、容量を揃えると日本はさらに高くなり、フランスとの差はより大きくなります。
【注意点②】フランス側の請求書はオール電化の住宅
今回の比較に使用したフランスの請求書は、オール電化(給湯・暖房も電気)の住宅のものです。ガス併用の一般家庭より電気使用量が多くなる傾向があり、6kVAという大きめの容量契約もそのためです。ガス併用の一般的なフランス家庭であれば、さらに小さい容量(3〜4kVA)で済む場合もあります。
なぜフランスの電気料金は安くて安定しているのか?
フランスの電気代が比較的安定している背景には、発電構成と料金制度の違いがあります。
発電量の約7割を原子力が占める
2025年のフランスでは発電量の68.1%を原子力が占め、再生可能エネルギーが28.5%、火力発電はわずか3.4%でした。一方、日本では2025年の発電量の約30%が原子力、約40%が火力、約20%が再生可能エネルギーとなっています(残りは水力など)。
原子力発電は建設費や維持費こそ大きいものの、発電に必要な燃料(ウラン)のコストが比較的安定しているため、LNG(液化天然ガス)や石炭を大量に輸入する国と比べると、燃料価格高騰の影響を受けにくい特徴があります。
一方、日本では東日本大震災以降、多くの原子力発電所が停止し、火力発電への依存度が高まりました。火力発電に使うLNGや石炭、石油は国際市場で取引されるため、資源価格の上昇や円安が進むと発電コストが増加し、電気料金にも影響します。
日本のような「燃料費調整額」がない
日本の電気料金には、燃料価格の変動を反映する「燃料費調整額」があります。LNGや石炭などの燃料価格に応じて毎月見直されるため、使用量が同じでも請求額が変わることがあります。
一方、フランスには日本のような燃料費調整額制度はありません。原子力比率が高く燃料価格の影響を受けにくいことに加え、規制料金制度のもとで電力調達コストを長期間で平準化する仕組みがあるためです。
そのため、日本ほど毎月の電気料金が大きく変動することはありません。ただし、フランスでも電気料金がまったく変わらないわけではなく、市場環境や政策変更に応じて料金改定が行われます。
規制料金制度による価格の安定
フランスでは、政府が認可する規制料金(TRVE)が存在し、主に毎年2月と8月に見直しが行われています。料金改定はエネルギー規制委員会(CRE)の提案をもとに決定されます。
電力会社によっては市場価格と連動するプランもありますが、多くの家庭では規制料金またはそれに近い価格体系を利用しており、短期的な市場価格の変動がそのまま毎月の請求額に反映される仕組みではありません。
再エネ賦課金の負担構造も異なる
日本では再生可能エネルギーの普及を支えるため、「再エネ賦課金」が電気料金に上乗せされています。2026年度の単価は4.18円/kWhで、月183kWh使用する家庭なら毎月約765円を負担する計算です。
フランスにも電力に関する税金(Accise sur l'électricité)はありますが、日本のように再エネ賦課金を明確に電気料金へ上乗せする仕組みとは異なります。
こうした発電構成や料金制度の違いが、フランスの電気代が比較的安定している理由の一つといえます。
ただし、フランスにも課題はある
「フランスの電気は安くて安定していて理想的」と単純には言えません。原子力中心の電力システムにはメリットがある一方で、課題も抱えています。
原子力への依存度が高い
フランスでは発電量の約7割を原子力が占めています。そのため、多数の原子力発電所が同時に停止すると電力供給に大きな影響が及びます。
実際に2022年には、原子炉設備の点検や応力腐食問題への対応により多くの原発が停止し、原子力発電量が大幅に減少しました。その結果、フランスは例年のような電力輸出国から一時的に電力輸入国へ転じ、欧州の卸電力価格上昇の一因となりました。
核廃棄物や廃炉の課題
原子力発電は発電時の燃料コストが比較的安定している一方で、使用済み核燃料の管理や最終処分、将来的な廃炉には長期的な費用が必要です。
これらの費用をどのように見積もり、将来世代も含めて負担していくべきかについては、フランスだけでなく世界各国で議論が続いています。
日本が原発を再稼働すれば解決するのか?
電気代の観点だけを見ると、原子力発電の活用拡大によって燃料輸入への依存度を下げる効果は期待できます。
しかし、日本では安全審査や地元自治体との調整、防災対策などが必要であり、短期間で原子力比率を大きく引き上げることは容易ではありません。
また、エネルギー政策は電気料金だけでなく、安全性や安定供給、脱炭素化なども含めて判断する必要があります。
じゃあ日本はどうすればいいのか
「再エネ賦課金を廃止すれば電気代が下がる」という声をよく聞きます。実際、毎月の請求書に乗ってくる賦課金への負担は高く、不満に感じるのも当然でしょう。しかし、再エネを増やしてエネルギーの自給率を引き上げること自体は、日本にとって避けられない長期的課題でもあります。
原油・LNGの大半を中東に依存する日本では、ホルムズ海峡の情勢ひとつで燃料コストが跳ね上がるリスクを常に抱えています。再エネはそのリスクヘッジとしての側面も持っています。政府も場当たり的に動いているわけではなく、エネルギー基本計画に基づき、再エネ・省エネ・原子力のバランスを取りながら長期的な方向性を示しています。
そして、昨今の中東情勢が長期化・複雑化するなかで、「電気代がこれ以上高騰するなら、原発の再稼働もやむを得ない」という現実論にも耳を傾ける必要があるかもしれません。エネルギー安全保障の観点から、原子力をゼロにした状態で燃料高騰に対応し続けることには限界があるように思われます。
個人レベルの努力で電気代を下げることはできる
エネルギー計画には十分な議論が必要ですし、一朝一夕に変えられるものでもありません。一方、家計は待ってくれません。なるべく電気代を安くしたい人にはいくつかの選択肢があります。
使用量を減らす(節電)
もっとも確実な対策です。1kWhあたりの単価が高い日本では、節電の効果が大きく出てきます。エアコンのフィルター清掃、LED化、待機電力のカットなど、地道な積み重ねが効いてきます。
電力会社・プランを見直す
新電力に乗り換えることで、年間数千円〜1万円以上の節約になるケースもあります。セレクトラでは、毎月最新の料金単価を反映して電気代をランキングしています。
電気代を安くしたい人は是非参考にしてみてください。