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電力会社とガス会社が提携する?

denkyu

電力小売市場の全面自由化を前に、石油や通信といったいろいろな異業種間の業務提携が次々に発表されていますが、なかでもガス会社の電力市場参入は際立っています。2017年からのガス市場の小売り全面自由化を前倒しするように電力市場への参入を図るガス会社の戦略を調べてみました。

電力とガスのセット販売に向けた提携

電力の小売市場が全面自由化されるのを機に、ガス会社が次々に電気小売り市場へ参入する動きが見られます。ほとんどの場合、電力とガスのセット販売を狙っており、ガスの小売市場が自由化される前に顧客取り込みを狙うガス会社と、セット販売で顧客をつかみたい電力会社の思惑が伺えます。その代表的な例をいくつか紹介しましょう。

東京電力と日本瓦斯、TOKAIホールディングス

自由化で最も激戦区になるとされている関東圏をテリトリーとする東京電力は、顧客の新電力への流出を防ぎ、関東圏以外の新たな顧客も引き入れようと、早くから様々な提携ニュースで話題を振りまいてきました。ガス会社との提携としては、これまでに関東が地盤の日本瓦斯、静岡県が本拠地のTOKAIホールディングスの2社との提携が発表されています。

国際石油開発帝石

中部電力とINPEX

中部電力も激戦区の関東区に進出するべく、資源開発大手の国際石油開発帝石(INPEX)と電力販売事業で提携しています。INPEXが天然ガスを供給する首都圏などの都市ガス会社に、中部電力の子会社ダイヤモンドパワーが調達した電力を卸売することで、ガス会社がガスと電気をセットで小売りできるようにするものと見られています。

すでに電力事業を開始しているガス会社の単独電気市場参入

都市ガス大手の中には、単独で電気小売市場に参入する会社も見られます。ただし、多くの場合、すでに何らかのかたちで特別高圧・高圧電力市場に関与しているか、電気会社との提携も念頭に入れているガス会社です。全面自由化に際しては自社の顧客を基盤に独自サービスを提供する予定にしています。代表的な例を挙げます。

東京ガス

激戦区の関東圏をテリトリーとする都市ガス最大手の東京ガスは、単独で小売り電気事業としての登録申込みを行っており、独自で電力販売を開始する動きを見せています。しかし同時に、売上高で第4位の東北電力と共同で、新会社「シナジアパワー」を設立して、群馬県や栃木県、茨城県といった北関東の3県を中心に、特別高圧や高圧の大口需要家への安定した電力供給も行っていく予定にしています。もちろん都市ガスとのセット割引も実施する見通しです。

大阪ガス

2000年の電力小売り部分自由化後、東京ガスやNTTファシリティーズとともにエネットを設立して、すでに特別高圧・高圧需要家向け電力事業を開始している大阪ガスも、ガスとのセット販売を基本として単独で電力小売り事業として登録申し込みを行っています。完全自由化が始まる2016年春より、一般家庭向けの電力供給を独自のサービスを開始する予定で、約700万世帯のガス顧客のうち、1割にあたる70万世帯への電力販売を将来的目標に掲げ、まずは10万~20万世帯を目指したいとしています。

北海道ガス

北海道ガスも2015年秋に単独で電力事業に参入することを決定し、10月29日、経済産業省資源エネルギー庁に新電力(特定規模電気事業)の開始届出書を提出しています。同時に、電力販売を行う共同出資会社「王子・伊藤忠エネクス電力販売」を2015年1月に設立した伊藤忠エネクスと、王子ホールディングス子会社の王子グリーンリソース(王子GS)両社とともに、北海道での電力ビジネス提携について検討を進める意向も発表しています。

発電設備強化のための提携

小売り市場完全自由化と直接結びついた提携ではなくとも、将来のエネルギー市場での立場強化をかけて、電力会社とガス会社が協力する例も見られます。

東京ガス、九州電力、出光の3社連合が首都圏に石炭火力発電所を建設へ

九州電力は激戦区となる首都圏の事業拡大に向けて、都市ガス最大手の東京ガスと、石油第2位の出光興産とともに、出力200万kW級の最先端の石炭火力発電所を、東京電力のガス火力発電所の隣に建設する計画をたてています。九州電力は、現在電力の売上高が5位のながら、首都圏を中心に九州以外の地域で事業を拡大することが急務になっています。新設される発電所の運転開始は2020年代半と予定されていますが、それまでは他の発電事業者や卸電力市場から電力を調達して首都圏の小売事業を展開する方針です。

国内外の市場開拓のための提携

関西電力とGDFスエズ

LNGtanker

上はLNGタンカー。一度に大量のLNGガスを運べます。

すでに100%子会社の関電エネルギーソリューションを通じてガス販売代行を担っており、将来的には液化天然ガス(LNG)の世界的な販売も考えている関西電力は、フランスの電力・ガス大手のGDFスエズ(エンジー)と、火力発電燃料のLNGの運搬などで提携する予定にしています。両社はLNG船の連携運用で調達コストの削減を図るとともに、お互いの顧客にLNGを販売できる態勢を整えることを目指しています。関西電力はすでに資源メジャーの英国BPグループのBPシンガポールとも運搬や販売で協力関係を強化しており、原発再稼働後に火力発電燃料が余った場合、LNGを中国や韓国などアジア市場に販売して、収益を拡大することを目指しています。なお、GDFスエズは2014年に中部電力とLNG購入に関する基本合意書を締結しています。LNGの安定調達は各社にとっての重要課題となっています。

中部電力と大阪ガス

中部電力大阪ガスは、米国でのシェールガスの液化・輸出事業に共同で参画しています。LNGの生産・輸出基地をテキサス州に建設するプロジェクトで、計画が順調に進めば、2018年に年間440万トンのLNGの輸出が始まる予定です。調達価格の安い米国のシェールガスをLNGに加工して輸入できれば、国内で販売する電力とガスの料金低下につながるとの読みが背景にあります。

 

ここに挙げた電力会社とガス会社の提携例はほんの数例に過ぎません。2016年の電力市場、2017年のガス市場の完全自由化によって、エネルギー分野では従来の業種を超えた様々な動きがますます活発化すると思われます。